賞ほど素敵な商売はない?(3)
理論物理学者小林誠氏、益川敏英氏の場合
えーと、先週南部先生の話をした際にちらっと出したのですが、
CP対象性の乱れ
、という単語。
宇宙そのものを構成する超重要な要素だったりするのですが。
この宇宙においては物質のほうが反物質よりも安定に存在する、
そういう現象が実際に起こっていたということなのですが、
それにしたって、なんだってそうなるのか?
物質というのは究極的にはエネルギーと等価である、その証拠に
真空中にガンマ線を照射すると電子と陽電子(反物質)が発生する
ことは1960年の段階ですでに観測されていました。
ここからが問題です。
物質と反物質の安定度合いに差があるのはどうして
か?
何らかの理由があってそうなっているはずなのです。
でなけれ物質世界というものが安定して存在しない、ということに
なり、そもそも根本がおかしい話になってしまいます。
自然界を構成する粒子はクォークとレプトンからなります。
(これらが究極の素粒子かどうかはなんともいえませんが)
このクォークの組み合わせによって陽子、中性子といった
原子核を構成する粒子や、あるいは中間子なども形成される
わけなのです。
にしても、この組み合わせが不安定なものと安定なものがあるのは
どうしてか?
先週数学の話を少し行いましたが、正と負の値の範囲
でのお話でした。
今週はさらにそこからもう少し話が広がります。
小林、益川両氏はこれらを説明するために理論を構築しました。
ざっくりいうとこんな感じです。
「物質を構成するクォークは全部で6種類」
「クォーク場の位相回転には複素数空間も関与」
複素数とは掛け合わせると負になる数で、
2
x
+ 1 = 0
このときの x の解が i で与えられる…高校でやりました、よね?
複素数空間でクォークに影響を与える存在がある。
この論文が発表された時点では
発見されていない未知の
粒子の存在を示唆
した、というわけです。
本論文の発表の段階では、世界的に見てもまだクォークが
3種類あるということがわかっただけでびっくりしている
そんな段階だったわけで、やっぱり
「日本人はイッちゃってるよ、あいつら未来に生きてるぜ」
といわれたりしてたのではなかろうかとも思います。
無論荒唐無稽な仮説なんていくらでもあるわけですが、その仮説が
どうやら正しいっぽいとなり、1995年までに6種類のクォークが
発見され、CP対称性の乱れも2001年には正しさが証明されました。
そして本年のノーベル賞受賞、となったわけなんですけどね。
…賞って、獲っちゃうとある意味学者人生的にはもう
「アガリ」
扱いされる部分ってのはなくはないと思います。
益川氏が受賞の言葉を受け「うれしくない」とものすごく
うれしそうな顔で述べていたのには、多少はそういう「アガリ」
扱いされるのが嫌という気持ちもあったと思います。
だって日本国内にだってライバルはいっぱいいるんですよ?
死ぬまで研究やりたいのが研究者ってものです。
お年寄りには賞をあげて満足してもらいましょう、ってそら
政治家や企業の偉い人はそれで満足かもしれないですが、こと
学者ってのは(特に理系の研究者は)それで満足できるほど
小欲ではないのです…。強欲なのです、ある意味。
貰えるんだったらせっかくだから貰っとこうと。
その代わり真理の探究は賞貰ったからって止めないよと。
もし「賞あげるから研究辞めて」といわれたら、研究者なら
おそらく賞辞退すること間違いないでしょう。
まったく強欲な人たちですね、でも
そのくらい強欲でないと、
真理の探究なんて出来ない
のかもしれません。